この1ヶ月で、高校生のお子さまが学位取得を目指して海外留学中、というご家庭からの英語のご相談を3件ほどいただきました。移住に伴い海外の高校に編入する方や、交換留学を予定される方も含めると6人ほどになります。
少し前までは、高校時代に海外での経験を積む選択肢は短期留学が一般的で、ときどき年間交換留学を選ぶ人がいるくらいだったと思うので、時代の変化を感じます。
将来を考えて、高校で学位取得のための数年間の留学を決断されて実行されているご家庭の思い切り、実行力は本当に素晴らしいと思います。
ですが、「行ってみて半年以上経つけれど英語に苦労していて・・・」というご相談をいただくことが多いです。
中学生以降で学習言語を英語に変えた場合、1年や2年では、授業についていくことや英語が楽になることはないということをお伝えしつつ、日常会話、そしてアカデミックライティングや授業の単語がわかるようになるためのサポートをコンサルとして提供させていただいています。
その際、大学入試に向けての準備戦略がないことが多く、少し気になっています。
もちろん、高校のはじめの段階で、大学進学は日本か海外か、どんな大学に行きたいか、などを決められるはずがありません。みんな、高校3年生になるくらいでようやく進路希望が考えられるようになるのが普通です。
でも、日本の大学に行きたいとなった場合には何が必要で、海外大学に進学したいと思うならば、この留学中に何をしておかなくてはならないのか、という、基本的な受験のシステムを理解しておくことはできるはずです。
特に、海外大学(特にアメリカ)や、帰国子女として日本の大学を受験する場合には、帰国入試が廃止されている時勢の今、総合型選抜になる可能性が高いわけですが、これらの入試方式には、「課外活動」と「英語試験スコア」、そして「高いGPA(成績の評定)」が重要になってきます。
これらはすべて、受験の直前になってから突然用意できるものではありません。
ですから、高校を海外で過ごして、その後、海外大学進学を可能性として考えるならば、あるいは、日本の大学を総合型選抜で受験する可能性があるのならば、上記の3つはいずれにしても準備しておく必要があるのです。そして、海外の大学は、提出するGPA(成績)は中学3年生時のものから必要です(高校が4年制であることが一般的のため)。中3から高3の4年間の平均の成績を提出することになるのです。ですから、課外活動に励みつつ、中3あるいは高1から、良い評定を取っていくことも、とても大切なのです。
これから高校留学を検討されている方々にも、意外と知られていないこういった情報をお届けできれば、と思い、今回、記事にすることにしました。
上記3つについて、ひとつずつ説明してみます。
【課外活動】
課外活動とは、文字通り、授業以外の活動のすべてを指します。部活動や委員会活動もカウントできますし、学校外で行うボランティア活動や研究活動、スポーツ、などが含まれます。ただし、これらは、部活動の部長をやった、スポーツもVarsity(一軍)のチームの部長をやった、という形で書くことが一般的です。
特にアメリカの場合ですが、課外活動ではリーダーシップの経験を見たいという面が強いので、アメリカの学生の中には、リーダーになれなかった場合には新しい部活を作って部長をやる、ということを選ぶ生徒さえいます。
長期休みに海外のボランティアキャンプに行ったとか、模擬国連への参加、何か研究テーマを持ってそれを長期間学んできたとか、本を出版したとか、会社を立ち上げたとか、、、こういったこともすべて「課外活動」に含まれます。
本を出版、会社を作る・・・普通の高校生では難しそうに聞こえますが、実際にアメリカのアイビーリーグなどに出願する願書に、よくある課外活動です(本当です)。
「そんな活動実績なんてない!😨」と思うのが普通だと思いますが、安心してください。アルバイトの経験や、家での介護だったり年少の兄弟の面倒を見ることなども、課外活動に含めることができます。自分の学校の授業を受ける以外の時間をどう使っていたか、それをうまく課外活動の形にまとめていけるよう、意識していくことが大切です。
アメリカの大学に出願する場合には、コモンアプリケーションというサイトを通じて、複数の大学に出願することが一般的です。ここで書く必要のある課外活動は、10個です。
10個すべて埋めるのが基本です(再びこんな反応がありそうです😨)。
上に書いたように、いろいろなことをかき集めて10個埋めていきつつも、「ただ課外活動のためにやった」ように見えるランダムな内容にならないように注意し、自分の興味関心が見て取れる一貫性を持つことや、その活動の必然性、自分の色が魅せられるように作っていく必要があります。
さらに、「海外活動」とは別に「受賞歴」も羅列するところがあります。こちらはまた5つ必要です。受賞歴は、学校レベル、地域レベル、国レベル、インターナショナルレベル、と分けて書くことになります。自分の興味関心の関係で、学校の何かのコンテストなどがあれば、機会を逃さずどんどん挑戦して受賞のチャンスを作っていきましょう。
こちらの記事では、もっと詳しく、具体的に課外活動について学ぶことができます。
課外活動(と受賞歴)、大変ですよね。。でも、上にあげたのはアメリカの大学出願の場合です。日本の総合型選抜はもう少し楽でしょうし、カナダやヨーロッパの多くの大学は、課外活動歴を出す必要がないことが多いです。(ですから、出願先がアメリカなのかヨーロッパ/カナダなのかで、準備の大変さはだいぶ違ってくるのです)
【英語試験スコア】
日本人が海外大学に進学するには、基本的に、TOEFLあるいはIELTSのテストスコアが必要です。大学によって必要なスコアは異なりますが、TOEFL iBTで少なくとも90、できれば95、欲を言えば100、IELTSで6.0、できれば6.5、さらに言うと7.0、取っておくと、どの大学にも出願できます。
英検をやってきて、TOEFLなどに移る場合、英検準1級を取得していても、初めて受けるTOEFLでは70~80くらいというのが普通です。1級取得後でも、初TOEFLは80前半だったという話も聞きます。
ですから、高校2年生くらいには、まず一度、TOEFLかIELTSを受験してみることをお勧めします。受験料が3万円くらいと本当に高いので、模擬テストでもいいと思います。その場合、5000円強で受けられるはずです。
こういった資格試験は、試験の形式に慣れること、高得点を取れるライティングの書き方を事前に学んでおくことなどが大切です。
先日Kindle出版した「英語学習コンプリートブック」の中の「英語学習ロードマップ」にも、TOEFLとIELTSのスコアメイクをしてくための勉強法も載せていますので、参考にしていただければと思います。
【高いGPA(評定)】
海外大学に出願する場合、世界のいろいろな高校で学んだ生徒たちが出願してきます。日本の高校は、一般的に言って、評定が取りにくい現実があります。
アメリカやカナダの高校では、簡単ではないのですが、4.0が満点の評定で、4.0を提出してくる人は大勢います。つまり、4年間ずっとオールAです。さらに、honorsやAPという、高校レベル以上の授業を取ると、honorsは0.5、APは1.0プラスになるので、満点が4.0のはずが、満点超えの4.3, 4,4というような評定を提出する生徒も数多くいます。例えば、ハーバード大学の合格者の評定の平均は、4.0だそうです。。。
日本は5段階評価なので、4段階に計算して提出するわけですが、例えば、評定5が2つ、4が2つ、3が2つの6科目で計算した場合、評定4ですね。これを4段階評価に換算すると、3.2になります。日本の評定が取りにくいことは大学の入試担当者も理解しているようなので、ある程度考慮されるかもしれませんが、アメリカもヨーロッパも、大学に提出する書類のうち最も重要視するものはGPA、と答える大学が多いので、できるだけ良い評定を提出したいことはお分かりいただけるかと思います。
日本の高校でGPAが取りにくいことを証明する方法もあります。例えば数学が5段階評価で3だった場合、4段階評価ではかなり低く見えてしまいます。でも、その時に、たとえばSATのスコアを提出し、Mathが730点(800点満点)だったとしましょう。この場合、この生徒は数学ができる、というたしかな証明になります(アメリカの学生はMathで730と言ったらかなり優秀ということになりますが、日本人なら頑張れば取れるレベルです)。
このような細かいフォローアップも含めて、海外大学出願には準備することがたくさんあるのです。
GPAに関して言えば、高校の最後の2年間を海外留学した場合、海外の学校の方が成績を取りやすいので日本よりも良くなり、オールAが取れた!ということを聞くこともありますし、一方で、英語がわからないので、英語や社会科の科目はCばかりついてしまった、、ということもよく聞きます。日本の評定よりもさらに低くなってしまうことも十分あり得ますよね。
もしも、海外大進学を見据えて、その準備に全振りしたい!と思う場合、、海外の高校に留学するのではなく、実は日本の通信制高校に編入することもひとつの解になるのです。
通信制高校は、学校にもよりますが、きちんと課題を出せば最高評価をつけてくれる学校が多いと聞きます。そして、自由になる時間も増えるので、その時間にたくさんの課外活動をすることもできるのです。
【高校での留学について】
通信制高校が一番海外大学進学の準備によいなんて・・・!!と思われる方もいらっしゃるかと思います。私は決して、通信制高校への編入を進めているわけではありません。
ロジックとしては、一番効率がよいのは間違いありませんが、高校時代は、部活や友達との時間など、効率では片付けられない素晴らしい経験をする時期です。楽しい高校生活を送るのが一番です。それが通信制高校だと思う場合には、それもありだと思います。
別に記事にする予定ですが、娘もアメリカのオンラインスクールに移ったおかげで、バレエに全力で取り組むことができ、それが今、アメリカ大学出願において、課外活動として大きく評価されているようです。
高校時代に海外に長期でひとり留学することは、大きな経験になることは間違いありません。
私自身、高校2年生の夏から高校3年生の1学期末くらいまで、アメリカの公立高校に留学しましたが、ほかでは得られない体験を得たと思っています。
長期間家から離れて暮らしたこと、外国でサバイブしたこと、海外の学校に通ったこと、、いろいろな経験と自信がつきました。英語力も、それなりについたと思います。
ただ、1年では、現地の授業が完璧にわかってよい成績を取れるほどにはとてもなりません(私の経験も含め一般的に。事前の英語レベルが英検準1級以上くらいの場合には、その限りではないかもしれません)。
英語が不十分の時期によい成績を取る、という点においては、試験のリテイクや追加課題をお願いしてメイクアップすることで、実力よりも高い成績を修めることができる事実がありますが、この辺りは学校次第かもしれません。私の場合、コーラスやスペイン語など、A+が取れそうなものを選んで履修しましたが、必修の英語やアメリカ史はなかなか大変でした。
私は日本の大学に進んだので、履修科目を問われることはありませんでしたが、もし、海外大学に出願を考えている場合、さらには理系の場合、成績が取れそうな教科ばかりを取ってしまうと、大学出願に必要な数学や物理の履修が足りない、ということにもなりかねませんので、注意が必要です。
いま海外大学への出願をしている娘は、ヨーロッパにある大学にもいくつか出願していますが、ある大学に出願しようとしたところ、数学はAP Calculusで3以上の成績という出願資格があり、出願できなかったところがありました。志望度は高くなかったので、まあいいか、となりましたが、文系であっても、理系科目の履修や試験スコアを問われることがありますので、ヨーロッパ大学を考えている方は、できるだけ、理系科目はきちんと取っておいた方が良いと思います。(ヨーロッパ大学の各大学の出願資格については、それぞれ個別にお調べください。娘はアメリカの高校カリキュラムと卒業資格を使っての出願だったので、基本的にヨーロッパはAP試験の結果で出願したようです。日本の高卒資格の場合、また別の出願要件があります)
脇道にそれましたが・・・高校での留学について。英語を一番上達させるためには、年間留学や学位取得を目指して現地の高校に行くことが一番いいのかどうか、これも一概には言えないと思っています。
日本の高校に通いながら、英語塾のようなところできっちりとしたアカデミックライティングまでを学び、長期休みごとに、海外のサマーキャンプや大学主催のサマースクールに参加したりすることで、生きた英語の学習もする。そして、足りないと思ったところを、また次の学期の間に学校外で英語の勉強を積み、次の長期休みでまた新しい場所で、レベルアップした英語力で参加する、、そんな繰り返しの方が、、英語力が上がる人もいるかもしれません。そして、この場合、課外活動がどんどん埋まっていきます。
もちろん、海外に暮らすことで英語に触れる時間がずっと増えることはたしかなのですが、場所によっては、留学生がたくさんいて、留学生同士の緩やかな英会話のみをして、LINEやインスタやPCで日本語を読み日本の友達と繋がっていたとしたら、、英語の爆伸びはなかなか難しいかもしれません。
もちろん、学校がオールイングリッシュで、街に出ても英語ばかりを耳にする環境は、確実に英語へのExposureを増やし、英語力アップにつながりますから、英語の伸びについては、環境と留学者本人のモチベーションによる、ということになるかと思います。
学位の取得という点についても、なぜそれが必要なのか、どのように活かすのかを明らかにしておいた方が良いと思います。
私の場合、10ヶ月間の交換留学だったにも関わらず、Grade 12に編入できて、日本の学校の単位を認めてくれたので、卒業し、アメリカの高校卒業学位を取得することができました。ただ、このディプロマは、大事に取ってはありますが、何かにプラスになったり利用したことは一度もありません。アメリカの高卒を取って帰国した半年後、日本の元いた高校の卒業証書も手にしましたので、大学受験(日本のみ)は、日本の高卒資格で行ったからです。
ところで、ときどき勘違いされている方もいらっしゃいますが、日本の高校卒業資格で、海外大学に進学できますし、アメリカなどの海外の高校卒業資格のみでも、日本の大学に出願することは可能です。もちろん、すべての大学ではありませんが、基本的に十分に選べるだけの選択肢があります。
近年、日本の高校でIBDPの取得を目指す方が多く、これについても一度記事にしたいと思っていますが、IBでなくても、日本の普通の高卒資格で、アメリカやヨーロッパの多くの大学に出願できますし、入学できます(イギリスはNGです。ファウンデーションコースに入る必要があります)。
ですから、高校で留学し、特に学位取得を目指す場合、その目的を明らかにしておくことは、モチベーションの点でも、その後の進路選択についても、とても大切だと思います。
あちこちに内容が飛んでしまいましたが、、高校時代に海外で経験を積むことは、きっと人生においてプラスになります。人格形成の一部分や、ものの考え方のベースを担うのではないかと思います。ですから、、高校留学中の皆さん、頑張ってください!きっといい経験になると思います。英語習得の方法については、コンサル等で具体的にサポートしますが、そういうことだけでなく、全体的に、応援しています!☺️
ただ、自分の意思での留学でない場合、なかなか苦しいことが多いと思います。どうしても、やっぱり違う、苦しい、、そんな時は方向転換もありです。
Grade 7 以降で海外の公立高校に(特に)英語ができずに入った場合の苦しさは、経験した人たちしかわからない部分があるかもしれません。
私はG12で、英語ができない状態で、でも自分の意思でアメリカに行き(むしろ時間をかけて親を説得して行った)、1年で帰る身だったので、いやなことも全ては経験、と、ある程度いろいろと割り切って過ごせました。
娘はG7で2回目のアメリカでしたが、英語がネイティブと同じようにできるアドバンテージがあっても、ヒエラルキーのある中学高校に突然Asianの転校生として入ってく厳しさを経験し、友達はできそうにない、と、はじめなかなか大変そうでした。
息子はG5で2回目のアメリカでしたが、G6、G7と親の都合で転校を繰り返し、英語は話せるものの、転校生としてランチを食べる相手を見つけるのもハードなアメリカのカフェテリアの厳しさを今でも語ります。
ある時Twitterで、「日本人男子中高生がアメリカで数年過ごすと・・・」という投稿を見かけたことがあるのですが、
「得られるもの:ネイティブのような英語、カースト最下位の立ち位置
失うもの:青春のすべて」
というのような内容で、思わず子どもたちにシェアしたところ、二人とも「当たり前じゃん、これ普通の認識」という反応に驚いたことを覚えています(涙)。
大学進学で海外大学へ出願する場合(特にアメリカ)、あるいは日本の大学を総合型選抜で受験する場合には、課外活動、英語試験スコア、そしてできれば高いGPAが取れるよう、準備していく必要があるということをお伝えしました。
高校留学真っ最中には、正直、日々の授業と課題をどうにかこなすだけで精一杯かもしれませんが、これらを意識していくことができればよいですね。できなくても、慌てないでください。きっと、どうにかなります!
ヨーロッパやカナダの場合、とりあえず英語スコアのみ用意できれば、十分に出願・合格のチャンスはあります!TOEFLかIELTSを頑張りましょう。
どうしてもアメリカがいいんだけどな、、という方は、よくリサーチした上でコミュニティカレッジに進むのも一つの手だと思います。コミカレは英語スコアが低くても入れる上、学費が安いです。コミカレによっては、有名な大学への編入がかなりの確率で成功するところもあるようです。
日本の大学についても、総合型選抜でダメだった場合にも、英語一教科のみの一般選抜もあります。ですから、何かが足りないとしても、道はきっと見つけられます。
ですから、何かができていないとしても、焦らず、諦めず、今目の前にあることに精一杯取り組んでいけば良いと思います。応援しています!
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