(2020年10月7日にnoteに投稿した内容の転載です)
日本の公立小中学校での英語教育について、前回記事にとりあげました。いろいろな方が、それぞれの分野で、これについて考えを顕しているのを見聞きしています。
そこでたくさんの人が英語教育の鍵になると考えていることは、「なぜ日本人が英語を学ぶ必要があるのか」をはっきりさせること。
英語を学ぶことについてのWHYの部分ですね。
たしかに、WHAT(何を学ぶ)やHOW(どう学ぶ)の前に、WHY(なぜ学ぶ)の確固とした理由や目的がないと、学習はなかなかうまく進みません。私もそう思います。
(でも、矛盾しますが、大人になってから何か学び始める場合と違って、子どもが学校で学ぶことの中には、その意義は後になってからわかることもあるんじゃないかな、、と思う部分も少しあります。
理由づけや納得が必ずしも常に必要なのではなく、有無を言わさず学ぶべき一般社会常識や教養、が、小学校の公教育で与えられるものなのかな、と。英語はそこに含まれるべきものだと思う部分はあります。
国語も数学も社会も理科も美術も体育も、、全部、一つ一つみんな納得済で学んでいるわけではないでしょうしね。。[だから定着しない学びが多いのか💦])
でも、今までなかったのに、急にみんな英語を有無を言わさず学ぶべし!というのは乱暴です。それに、本当にWHY「なぜ必要?なぜ学ぶ?」をはっきりさせることができたら、誰から何を言われなくても、子どもたちは勝手に英語を学んで、勝手に習得していくようになるでしょう。それくらい、モチベーション、学びの動機が学習の成果に大きく影響することは間違いないと思います。
だから、突然入ってきた英語に関しては、そこのところ、しっかり確認してみるのもよさそうです。
以下に、私が考える、日本人が英語を学ぶ理由(意義)と、その先に続く提案を書いてみました
●英語を学ぶ意義 その1
〜自分の活躍の場を広げるため〜 (収入・機会UP・役に立つ)
これが一番世の中で言われる「英語を学ぶべき理由」だと思います。
日本の中だけで生きていっても十分に豊かだった時代は過ぎ、少子化や国際競争力の低下、円安、いろいろな理由で、日本だけで仕事をしていくと貧しくなっていくことは避けられない事実となってきています。
英語ができることで、外国で、あるいは日本に居ながら外国の企業で仕事をして、グローバル賃金を稼ぐことも可能になります。日本と他の国(特にアメリカなど)の初任給の差や生涯賃金の差は3倍以上とも言われています。日本以外で働く選択肢も持てたらいい素晴らしいですよね。
でももちろん、海外で仕事を得て暮らすことは簡単なことではありません。仕事を得るには、高い英語力と、さらに何かの専門やスキルが必要です。さらに外国人として生活することは大変なこともあります。日本の便利さやおいしい食事を考えると、日本で安い賃金で小さく生活していく方がいいと思う方もいるかもしれませんね。
でも、どうあがいてもすでに世界はネット上で繋がっています。グローバルレベルの情報を得ず、日本語だけでやりくりしようとすると、いずれ本当に一つの村で文明から離れて暮らしているかののような状態になるかもしれません。普通の日本の企業でも、日本人のみですべてが成り立っていくかどうかわかりません。英語という、グローバルスタンダードでは当たり前の能力を持っておくことで、何かの際に「選べる身」あるいは「選んでもらえる身」になることができるはずです。
スポーツや芸術など、何か特定の分野に本格的に取り組んでいて、よりよいプロフェッショナルの環境やその道筋を求めて、海外に出ていくこともよくあると思います。英語力は必須になります。こういった場合は、さらに明確な動機づけがあるので、モチベーションを保って英語学習ができますよね。
「英語を、自分の活躍の場を広げるために、学ぶ」
自分を上方向に広げていくイメージ、「向上心」を持つ人の英語学習の意義になると思います。
●英語を学ぶ意義 その2
〜自分の世界を広げるため〜 (楽しい&新たな自分に出会う)
扱える言語を複数持っていると、異なる物の見方を手に入れられるし、新しい自分のキャラクターを持つこともできます。
言葉と、その言語の持つ文化的背景は切り離せません。英語ほか、新しい言語を通して身近に知る外国文化は、魅力的です。海外ドラマが好きな人は、やはり原語で聴いてその笑いの背景も理解したい、と思うでしょうし、海外旅行に出かけて現地の人とやりとりするひとときが人生のスパイスになっている人もいるでしょう。もちろん、この場合は英語に限らず別の外国語かもしれませんが、とりあえず幅広く世界の人とコミュニケーションが取れるツールは英語です。 英語を話すときはオープンな人柄になる、明るくなる、細かいことを気にしない、など、同じ個人なのに、違った自分を発見することができる人は多いと思います。例えて言えば、自分というひとつの閉じた建物の別の角度に、新たな窓が開く感じでしょうか。私も、日本語で話す時、英語で話す時、スペイン語でやりとりする時、、それぞれ微妙に違う景色が見えて違う風が入ってくる気がします。話す言葉を増やすと、また新しい自分を手に入れることもできると言えるかもしれません。
このように、 「自分の世界を広げるために英語を学ぶ」人もいますよね。 自分の幅を広げたり、横方向に自分の世界を広げていくイメージ、「好奇心」を持つ人の英語学習の意義になると思います。
●英語を学ぶ意義 その3
〜よりフィットする世界に逃亡するため〜 (生きやすさのため)
最後のこちらは、私は、とても理にかなった英語を身につける理由だと思っているものです。 どちらかというとネガティブに聞こえますが、日本で生きていかなくて済むために、英語を習得する、という理由です。
日本には、島文化のせいか、お互いを監視し合ったり、出る杭は打たれる文化が存在します。とても優秀で打たれる杭になって辛い人、発達の特性が強めで「人と同じ横並び」が苦手なお子さん。ほかにも、なんとなく日本で暮らすのは息苦しいと感じる人・・・。たくさんいると思います。
日本の常識は世界の非常識、とはよく言われることです。日本以外の文化で暮らすと、日本では辛かったことで意外と苦労しなくて済んだり、むしろやっかいだと思っていた自分の特性がプラスになってどんどん力を伸ばしていくことができたり、別のスタンダードを手に入れることが可能になります。 もし、今いる環境に息苦しさを感じているなら、そこに自分を合わせるのではなく、自分が自由でいられる場所を見つけて、そこで生きていくことを選択してもよいのです。ただ、それには、英語ができる必要があります。
例えば、日本の公立の学校に通っていて馴染めないお子さんがいたとして。。 私が知っているいくつかのアメリカの学校で知るだけでも、授業中なのに寝そべっておやつを食べながら授業を受けられる教室もありますし、どんなに小さなことでも1年間のうちにクラスの全員がなにかで表彰される教室もあります(まったくしゃべらない目立たない子なら Best Listenerとか)。それから、学校で子ども同士の揉め事やいじめなどがあった場合は、その子たちは基本的に折りが合わないと判断し、学校側でその子たちが同じクラスや活動の輪に入らないようにしてくれます。当事者に話し合いをさせることなど決してなく、「みんななかよくしましょう」の幻想などはありません。もともと違いがあることを前提としているのですね。 もし日本で学校にうまく馴染めないとしても、その場所が自分にフィットする場所ではないだけなのかもしれません。ディスレクシアなどについても、他国の方がサポートが進んでいると聞きます。より楽に生きられる場所を知って移ることができたら、人生は変わります。
もちろん、どの土地でもいいことばかりではありませんし、暮らしの場所を変えるのは簡単なことではないと思います。 でも、まず英語ができると、日本を飛びだしてもっともっと広い世界の中から、自分に合った環境をを選ぶことも可能になるのです。
だから、英語を身につけておく。 「逃げ道を増やすために、英語を学ぶ」 自分の居場所を決める範囲を広げるイメージ、「オルタナティブ」を探す人の英語学習の意義です。
●英語を学ぶ理由を考えなくていい方法
さて、こんなふうに、英語を学ぶ理由・意義をいくつかあげてみましたが、どうでしょうか。自分が英語を身につける動機付けを確認できた人もいるかもしれません。でも、時間がかかる言葉の習得を進めていく長い道のりの中で、常にモチベーションを保つのは簡単なことではありません。
そこで、そんな理由付けを考えることなく、物ごころついた時には英語を話せるようになっていた娘に訊いてみました。
「後からこうして動機付けをして英語を学ぶより、そんな以前に、とにかく英語がわかるようになっていてよかった?」
そうしたら、「ものすごくよかった、すごくラッキーだったと思う」、とのことでした。それはそうですよね。。ああだこうだと理由をつけなくて良い幼児の時代に、母国語の日本語だけではなく、英語も当たり前のものとして聴いたり話したりできるようになっていたのですから。。(羨ましい・・・)
ということは、やはりいわゆる「おうち英語」組がある種の正解なのでかもしれません。
0歳からでなくてもいい、2歳くらいから、日本語と同時に英語も同時に耳に入れたり、本を読んでもらったり動画を見たり、英語は「あたり前に周りにあるもの」にしておく。それがスタンダードになったら、「英語を学ぶ理由」という議論は不要になりますよね。
でも、個人的には、それぞれの家庭で努力をする「おうち英語」をみんながするというよりも、国全体で、特別なこととしてではなくて、みんなが自然とそんなことができる環境に整えていくことが理想だと思います。これから生まれる日本の子どもたちには、そんな環境を用意してあげたいものです。
でも、国やだれかが環境を整えてくれなくても、いまはアプリやウェブサイトで無料で幼児から英語に触れられ、文法を含めきちんと学んでいけるコンテンツはたくさんあるのです。 日本で、お金をかけずに、「誰でもあたりまえにおうち英語」をすることも、可能なのですよね。これについては、順序やレベルも含めて、どんなアプリやウェブサイトを進めれば英語が話せて書けるようになるか、ロードマップをまとめてみようとしているところです。 +++
しかしながら、すでに日本語でこうして読み書きができるように育ってしまった私たちは、やはり英語を学ぶ理由を明らかにしながら、あまり負担やプレッシャーを感じ過ぎずに、楽しく英語を身につける過程を進んで行くしかありません。
ただ、、学校外で自分の動機付けを踏まえた内容で楽しく英語を習得していくのはそんなに難しいことではないのですが、、学校教育の英語という教科となると、テストをして成績をつけることが必須、そして、後の高校入試や大学入試に対応した授業内容を行わなくてはならない、、ということになってしまい、個人の英語を身につけたい目的とは相入れない内容、方向に進んでしまいがちです。 そして、テストのための英語は面白くないのです。。。英語嫌いを生み出してしまっている。
学生さんの、楽しく生き生きと英語を身につける過程を邪魔してしまう学校英語では困りますよね。
学校の教科として英語を学ぶこととを、実用として英語を身につけることにもっと寄ってもらうしかありません。 いっそのこと、入試方式を一切合切変えて、学校の授業も、英語だけでなくすべての教科において、I teach, you listen 型の授業を廃止して、「世の中から学ぶ(オンラインや社会にいる人々)」形にしたらいいのに。。(教師は教える人ではなくファシリテーター)と、どんどん話のスケールが大きくなってしまいます。。 とりあえずのところ、私は、学校外で、お勉強感は極力削ぎ捨てて、楽しく、最短で英語を身につけるために進んでいくための伴走や、コンサル、ファシリテートを、これからもしていきたいと思います!
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