(2022年11月19日にnoteに投稿した内容の転載です)
たくさんの公立中学1年生が、英語がわからなくて授業についていけず困っている。 という話を、アメリカに住む私ですが、日本に住むいろいろな方から(少なくとも地域の違う4人の方)から聞いています。
我が家には、日本大使館から年度の始まりに配られる教科書があるため、子どもたちは補習校にも行っていませんが、手元に、中学1年、2年、3年の教科書があります。 (息子は去年中1、その時娘が中3の学年だったので、今年息子の中2の分をもらって、中学3年間分)
それで、あまりに、「中学1年の英語、小学校で習った前提でいきなり難しいし、これじゃあわからないよ、、」と聞こえてくるので、いただいた英語の教科書を開いてみました。
手元にある英語の教科書はNew Horizonという教科書です。調べてみると、公立中学ではほとんどの学校がNew HorizonあるいはNew Crownを使っていて(ほかにもSunshineなどもあり)、レベルには大きな差はない様子。
何に驚いたか
さて、中1の教科書をはじめから見てみましたが、驚きました。
●フォニックスはDiagraphs(二つの子音で一つの音)などの応用も含め、すべて習得済みという認識になっている
これはUnit0ということで、もう習ったよね?という扱いのようです
●Unit2で最初に学ぶ文法としてBe動詞と一般動詞が同時に出てくるが、疑問文や否定文も一度に登場し、理解できる説明になっていない(丸暗記せよとしか読めない)
説明の後にどのくらい例文をみて練習するのでしょう??
これ、外国語をいちから学ぶための始めの一歩とはとても思えません。その先も一通りみてみましたが、文法事項にしても単語にしてもなんにしても!
なにも教えていない。
びっくりです。これでは、英語わからない、英語嫌い、テストで点が取れない・・・当然です!
何も教えていないのに、どうしてそれでテストをして、できないならがんばれ、などと言えるのでしょうか。。😭
たくさんの中学一年生が、最初の1学期で英語がわからない、苦手、できない・・・と困った状態でいると伝え聞いた話は、実際にあちこちで起きていることと想像できます。教科書を見るに、そして授業を想像するに、これは生徒さんのせいではありません。
小学校英語の現実
我が家の子どもたちも公立小学校にいたので、教科化される前ではありましたが、小学校での英語教育の実態はみてきました。 あたり前ですが、第二言語を教えることを特別に学んだわけではない担任の先生が、しかも英語は苦手でわからない、、とおっしゃっている場合も含めて、担当するわけですから、、体系だって児童に知識を渡し、きちんと話せるようになる練習をさせているわでは、決してありません。 ALTの先生方も、使命感を感じ頑張っている方もいますが、全体像が見えていない中で自分のできることをする、というのが精一杯で、小学校英語は「英語学習」としてカウントすることはとても無理だというのが実態だと思います。提供する側も、受ける側も、外から見た人も、だいたいみんなそう思っていると私は感じていました。
だから、「小学校で習ったことになっている」ということで、一番大事な言語学習のはじめの一歩をすっ飛ばして中学英語をはじめていたら、それはもちろん、生徒さんはさっぱりわからず大混乱で当然だと思うのです。
トピックの内容
中学英語教科書に戻ります。
内容に関しても、文化の違いなどにフォーカスして、スポーツや食べ物、場所について外国のことと日本のことを交互に紹介する運びが多いですが、まずはじめに英語の基礎を学ぶというのは、英語を使えるようにするためのものであって、文化を学ぶ時間ではありません。 教材は、違いを捉えるのではなく、共通理解を軸にした内容であることがとても大事なポイントです。
クリケットってどんなスポーツ?とか、朝食の違いとか、、日本の夏祭りとか落語とか初詣とかおせちとか、、、そういう、お互いが前提として知らないことを外国語で説明するのは、難しいんです!(普通に考えたらそう思いますよね?笑)(・・これ全部中1の教科書に出てきたトピックです😵) そんな内容を、まさに今から学び始めた言語でやろうとしては、英語が無駄に難しく思えてしまうではないですか!
どうやら日本の英語という教科は、本来の目的の、 「英語を使いこなせるようにする=外国語の言語能力を獲得する」 ではなく、 「日本と海外の文化を拙い英語で紹介し合う」 ことが目標になっていそうです。そして、そこで脈絡なく出てきた単語を覚えてテストする、、という流れ。
発音
ネイティブでさえ、小学校スタートから2年間かけて学ぶフォニックスを、ほぼやってもいないのに習得したことにするのも、生徒に酷です。 (アメリカでは年長と1年生の2年間をかけてフォニックスをゆっくり一つずつ学びます。きちんと読み書きできるようになるためです。)
もし、私が授業でこの教科書を使わなくてはいけなかったら、使うところは巻末の「資料編」の数ページだと思います。ここでようやく、長母音の読み方やサイトワードを少しだけ教えてくれます。
発音記号、しっかり教えてくれるわけでも使うわけでもないから、不要だと思います
むしろちゃんと学ばない限り暗号みたいで難しく感じてしまいます・・
過去記事にあるColor Vowel Chartの方がわかりやすいと思います
こういった資料に時々目を落としながらあとは自分で顔を上げて話す練習が大事です
発音を学ぶことも学校ではほとんどないようですが、
英語の読み書きの始めにフォニックスで文字の音を覚え、そのときにサイレントEを学べば、読み上げるのはわりと簡単だし、なんとなく英語ってそういう言語なんだ!とわかってきます。
でも、サイレントEは日本の英語教育では決して教えてもらえないようで、、私がレッスンで扱った後には、生徒さんのお母さんがほぼ必ず、「こんなの知りませんでした!なるほどです!」とメッセージをくれます。
そう、もっと早く知りたかったですよね!!私も、娘がアメリカのキンダーガーデンで習ってきた時、同じことを思いました!
これは母音のふたつの読み方(short soundとlong sound)のレッスンを終えた後に学ぶところです
この二つの歌を聴けばレッスンなくても理解できてしまいますよ♪
学び方を教える
それから、学び方として唯一出てくるのが、辞書の引き方のようです。 紙の辞書を引いて勉強するZ世代や@世代がどのくらいいるでしょう?(常識として知っておくのはいいことだと思いますが、、これからの子どもたちがOld School!と思ってくれるかな) オンラインでどうやって意味を検索するか、役に立つ学び方をきちんと教えてあげることが、生徒の学びの助けになります。せっかく長い時間授業をして生徒にそこから学ばせるのなら、役に立つことを教えてあげて欲しいです。。。
最後に
この教科書作成をされた方や、これを使って授業をされている先生を批判したいわけではありません。そう聞こえてしまったら申し訳ありません🙇♀️ 私が問題に感じているのは、システムに対してです。 このシステムのせいで生徒さんが英語嫌いになって、自分は英語できないから・・・と自信を失っていくのはよくないです。そんな中学生がいたら言いたいです。
もっとわかりやすいメソッドとプロセスで学んで必要な訓練をしたら、絶対にわかるしできるようになるよ!! こんなふうに書きながらも、私も知らないもっと良い英語教授法はきっと、まだまだあります。私自身も無知を自覚しています。 謙虚に、常にいろいろな人から学びながら、英語教育に携わるすべてのセクターの人々同士で手を取り合って、すべては生徒たちの明るい未来のため!協力していけたらいいな、と思っています。
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